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090730

坂川事務所+バーソウ/デザイン会社

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坂川事務所+バーソウ/デザイン会社
東京都港区南麻布(一戸建て/築85年)
社員数:合わせて10人/面積:一階130平方メートル、二階55平方メートル

デザイン・ポイント:築85年になる洋館風の木造建築というのは確かに古い。しかし古いからこそいじり甲斐があるのである。古く落ち着く印象はそのままに、モダンな機能をどう持たせるのかが楽しいのだ。その考え方は古いヨーロッパの石造りの建物の外装は変えず、内装だけを今風にモダンに変えるのと同じである。

入居当時は畳の部屋に障子や床の間もあるような部屋だったので、ガラリと改装した。仕事柄保管する本の量が半端ではなかったので大家さんに許可を取って、床が抜けないように基礎から直し丈夫なフローリングに貼り変えた。欧米風に靴を履いた状態で仕事をしたかったので、基礎工事はそれにも対応する処置になった。それ以外は余計な物を取り去り、壁を白く塗っただけである。一階は二つの会社が20畳ほどの広さを二分して使い、二階にある二つの部屋は打ち合わせ用として使っている。

戸建ての面白さは"いじりがい"があることだろう。古い家の面白さは持ち込んだアンティーク小物が、まるで以前からそこにでもあったように馴染むこと。そして屋根裏部屋のような収納スペースが思ったよりも多いことである。パソコン関係以外の備品で新しく買った物はひとつもなく、ドア枠や窓枠といった細かな所や壁のペンキ塗りといった作業は楽しいので自分たちで行った。天井からの照明はできるだけなくし、代わりにシェイド・ランプの数を増やした。打ち合わせの部屋のシェイドの付いた照明は、欲しい物がどこにも売っていなかったので自作である。四角い部屋の基本的な部分は急いで作ったが、それ以外の部分はゆっくりと時間を掛けていじった。打ち合わせの部屋の窓にはブラインドか、カーテンかを決めるのに3年も掛かっている。

装丁の仕事は着実に本が増える。年間三百冊以上にはなるので、頃合いを見計らって新しく本棚を作らなければならない。無駄なく本棚を増やすために4面を本棚で囲った小さな書庫のような打ち合わせスペースを作った。本棚の裏側も廊下の壁として有効利用している。戸建てをいじることの面白さを知ってしまうと、もう窓も開かないようなビルの中の物件などはお金をもらっても入りたくなくなるものである。「パリ郊外にある小さな出版社なんかは、丁度こんな風な一軒家を利用した感じですよ」と行ったことのある人に言われたことがある。どこの国にも似たようなことを考える人はいるのである。見たところウチの会社は何をやっている会社かわからないだろうけれど、仕事が仕事場を作るんだという考え方をすれば、こんなウチのような例がひとつくらいあってもいいじゃないかと思っている。

              

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