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Photo:徳永隆之
 

写真集紹介

100628

「Amusement Parks 遊園地」
Photo:徳永隆之

夢の中のような遊園地は
不便な撮影方法から生まれた
針の穴のような心象風景である


夢の中にいるようである。それも昼に見る夢のようである。半分が現実で半分が非現実のようである。レム睡眠状態のようである。遊具の機械は働いているのに、それに乗っている人や遊んでいる人がいない。観覧車やメリーゴーランドだけが、目が回るようなスピードで回転している。不思議な印象の写真集である。

この写真集は徳永隆之がピンホール・カメラを使って撮ったものである。カメラといえば一昔前だったら撮影テクニックの差がもろに出たものだが、今はピントが合わないとかシャープじゃない写真を撮ろうとする方が難しいほど、カメラは進化してしまっている。それがいい事なのか悪い事なのかはわからない。何でもかんでもキレイに写る事が面白いのか、写そうとするよりも写ってしまうことが必要な事なのか、やっぱりわからない。ただひとつ言えることは、表現手段が便利になればなるほど写ったものが、雄弁なのに脆弱になるという傾向があるということだ。不便や不足感はマイナスの概念でしか捉えられていないが、表現や伝えるということに関してはプラスなのではないだろうか。進化と脆弱さはちょうど便利ななずのケイタイ電話が、逆に寂しい人も作り出しているのに似ているかもしれないと思うのである。

話は逸れたが、気怠くぼんやりとしたこの写真集の写真は、くっきりとした確かさがない分だけ眺める者の遊園地への憧れやノスタルジーを、いつの間にか心象風景に変える働きをしていた。暗箱に針穴というカメラのもっとも原初的なこの撮影方法は、長時間露光させるところが一番の特徴である。つまり働いているのは写らず、止まっているものだけが証拠を残すのである。そのことを考えながらこの写真集の写真を眺めていると、時間のことを考える。現代に生きるピンホール・カメラを向けたら、ほとんどの人が写らないんじゃないだろうか。江戸時代だったら、きっとたくさんの人たちが写り込むに違いない。

そんな「生きるスピード」のことも考えてしまうほど、この不便な撮影方法の写真は私を物思いに耽けさせるのである。新風舎は最近、たくさんの写真集を出している出版社である。この写真集も著者と新風舎が共同で出資するというシステムで作った一冊である。
この頃は,写真集という割の合わない本を出す出版社が少ない中で、この方式が業界に「新風」を送り込んでくれる役割を果たしてくれたなら嬉しいのだが。


「Amusement Parks 遊園地」
A4変型判 72P
定価3,150円(税込)

コマーシャル・フォト(玄光社) 2004年5月号掲載

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