コラム
坂川栄治のポッポッポッのはなし
達するということ 日曜日はいつも昼ご飯を食べた後、一人で外出することが多い。 車で本屋さんへ出かけ、庭の見えるカフェでエスプレッソを飲んで夕飯までには帰宅するのがいつもの習慣になっている。 その...
祭りの後
もちろん外には雪が積もっていた。1975年の冬だった。 札幌の六畳一間のアパートに、22歳の若者が二人いた。一人は私で、もう一人は高校時代の親友だった。彼は東京の写真学校に通っていた。冬休みの...
言葉の匂い
先日、知人の女性からこんな話を聞いた。 フェイスブックで知り合いになった外国人男性がいるのよ、と彼女は言った。日本に何年か住んでて日本語が話せるフランス人で、年齢は三十代らしかった。 彼は日本人の女性...
体臭
30年、いや、ひょっとしたら40年くらいの長さになるかも知れない。 新陳代謝の激しい年齢だったら若さの代償として香るもの。自分の匂い。自分の体臭のことである。それは物心ついた頃から始まり、若さを分泌...
本棚と石
デザインの仕事をしている私は、文字にも色彩にも紙にも印刷にも当然のように縁がある。というよりもそれらを駆使して仕事をしている。 ましてや装幀業になると、自分が手懸けて出来上がった単行本や絵本、写真集...
新聞紙
私は新聞紙派である。 いきなり何を言うのか。いやいや、デジタルの波が至る所にゆっくりゆっくりやって来ているのだなということを言いたいのである。 うちの会社で昼時に社員が持参した弁当を広げながら机...
一年が40回繰り返されて
カップラーメンにお湯を注いで3分待つ。人はその3分間をただじっと時計を眺めて待てば、普段の時間感覚よりも長いと感じる。 しかし同じ3分間も何かをしながら待つと、思ったより時間が短縮する。 1秒の...
女という奴は
休みの日の夜は、晩ご飯を食べ終わるとテレビを見てくつろぐ。 二人の子供たちは家を出てそれぞれ独り暮らしをしているので、家には猫と私たち夫婦がいるだけで寂しいような気楽なような夜である。 妻はソファに寝...
大人買い
先日、久し振りに青山のABCへ行った。普段は地元のデパートの中にある本屋さんで買うのだが、どうしても欲しい本がある時には青山まで足を伸ばす。 さすがに都心の本屋さんは品揃えがいい。少しマニアックなも...
イチジク
イチジクという果物は何とも捉えどころがないので、長い間手を付けずにきた気がする。 北国では接する機会がなかった。しかし東京へ出てきてから口にするようになっても、そののっぺりとした甘さだけの味にはどうし...